ゴルフ哲学

ゴルフ上達方法は、沢山ボールを打つ事ではありません。人が行うゴルフスイング動作は特別な動作ではなく、issueを特定し、知覚と意識に目を向ける事が上達には欠かせません。

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学問なんて、覚えると同時に忘れてしまってもいいものなんだ。

会得と体得

知識を身につけ、様々な実体験を経て、やがて他人に自分の知識や経験を教える機会が訪れる。

知識を身につけるには、インプットだけでは記憶として定着しにくく、アウトプットが必要不可欠と言われる。

www.nikkeibp.co.jp

 予防医学者の石川善樹氏は、物事を考える時、情報をどれだけ入れるかはすごく重要で、情報量が少なければ少ないほど、創造力とか地力を働かせる余力が増え、過去の研究成果を調べすぎると、どんどん枝葉の方に目が向いていき、大局観を失ってしまうと言う。

 棋士羽生善治三冠は、人工知能を取り扱ったNHKスペシャルの中で、番組スタッフの質問に対して「将棋が強くなるという事は、たくさんの手を考えなくて済むようになる事。たくさんの手が読めるから強くなるわけではない。」と答えた。

www.nhk.or.jp

この見解には驚いた。

過去の対戦で蓄積された、膨大な棋譜データを元に対局を進めているイメージがあった。

棋譜データは蓄積され、潜在意識下に投下されていて、無駄な思考を省き、対局の時は直観及び創造力で勝負をしているのか。

その道を究めた偉人の思考は、凡人にはなかなか到達しない。

しかし、凡人にも理解できる部分はある。

私事ではあるが、ツアー参戦の道を諦め、インストラクターとしての職に就いた当初、今まで自分のスイングのことだけを考えてゴルフをしてきて、他人のスイングをただ何となく見る事はあっても、理論立てて考える事など皆無であった。

ティーチング・コーチィングの研修は受けたが、このままではレッスンを受けに来ている方に納得していただける事は出来ないと判断し、片っ端からレッスン書を読み漁った。

原理から理論体系化された知識を身に付け、どのレベルのゴルファーに対してもレッスンできる術は身に付けたつもりだった。

その理論を裏付けるため、自分が実験台となりあらゆる理論を試した。

見た目が良くなければ、納得してもらえないと思い込みビデオチェックが欠かせなかった。

初めのうちは良かったが、やがて理論、見た目、結果が一致しなくなり、常に動きが気になり練習レンジでは問題ないが、コース上で思うように打てなくなった。

そのような状態で教える事に疑問と不安が芽生え、レッスンを続ける自信を失った。

レッスンの仕事から離れる事を決意した時、フランスのゴルフ場で仕事をする機会を得た。

ゴルフ場を立て直す事が条件であったが、今一度ゴルフコースにどっぷり浸かる事で新たな発見がある事を信じて決断した。

 時間を作れば、毎日でもコースに出る事が出来る環境を手に入れた。

まず以前より疑問に感じていた事を整理して検証する事にした。

果たして全ての人に共通する理論などあるのだろうか。

練習レンジで出来る事がなぜコース上で出来ないのか。

クラブが変わると打てなくなるのはなぜなのか。

スタート時に違和感がなかったのに、途中から違和感を覚え崩れるのはなぜなのか。

スイング理論は必要であるが、ゴルフの本質はコースラウンドで結果を出す事であり、環境の違いは思考と動作にどの様な影響があるのか。

会得と体得にはギャップがあり、会得段階の良し悪しと気付きで、体得するまでの時間に大きな差が出るのではないか。

ギャップを埋めるには、理論を追求するのか、感覚を論理的に組み立てるのか。

多くのゴルファーは何に悩み、どこを目指せばいいのか考えた。

様々な仮説検証を繰り返し行い、会得から体得に切り替わる過程に何が起こるのか。

 

スポーツ界の偉人であるイチロー選手の発言は、トレーニングに於ける意識と動作、筋肉に至るまでの鋭い洞察力を感じさせる。

動作に意識を集中するのではなく、まったく関係のない事を思考する事で別の効果を生み出す気がすると言う。

動作に意識を集中させれば、動作自体はぎこちなくなる。 

やがて、その意識が薄れ、結果が伴えば、その動作を体得する事が出来る。

体得するまでの時間は、トライ&エラーを繰り返した時間であろう。

 

太宰治著「正義と微笑」の中の一節。

『学問なんて、覚えると同時に忘れてしまってもいいものなんだ。けれども、全部忘れてしまっても、その勉強の訓練の底に一つかみの砂金が残っているものだ。』

主人公が現在の金子先生と尊敬する退職した黒田先生を比較して回想する場面、黒田先生の最後の授業で、先生が言った言葉。

『勉強して、それから、けろりと忘れてもいいんだ。覚えるということが大事なのではなく、大事なのは、カルチベートされるということなんだ。』

 

 

 動作にも多くの情報は必要なく、動作は考えて行うのではなく、動作を行う前に、これから行う動作を如何にして呼び起すかが最も重要である。

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