ゴルフ哲学

ゴルフ上達方法は、沢山ボールを打つ事ではありません。人が行うゴルフスイング動作は特別な動作ではなく、issueを特定し、知覚と意識に目を向ける事が上達には欠かせません。

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思考する者もいれば、行動する者もいると言うが、真の人間の条件とは、手で考えることだ。

摘まむ動作と握る動作

道具を使って行う競技は、多種多様であり、ゴルフと同じカテゴリーになる球技にも多くの種類があるが、数ある球技の中で、ゴルフの様な道具の握り方で動作を行う球技が、他にあるだろうか。

何が、どの様に違うのか。

親指の位置である。

果たして、他の球技に、親指を道具に密着させて握る球技があるだろうか。

野球やソフトボール、ボーリングなども親指を利用してボールを投げるが、球体とゴルフクラブのグリップでは形状が余りにも違う。

比較するなら、バットなどの打撃に用いる道具になると思うが、野球のバット、テニス、卓球のラケット、ホッケーのステック全て、親指を外して握る。

単純に、親指を外して握るのが、道具を扱いやすいからであろう。

 

親指は、指の中で一番力が入る指である。

親指は普段の生活であまり意識しないが、大きな役割があり、主に物を支える時に使う。

親指を意識的に使わないようにするとその重要性に気付かされることになる。

 

1964年にタンザニアで発見されたヒト属最古と言われたホモ・ハビリスの化石には、ホモ・ハビリスが作ったと思われる石器が化石と共に見つかっている。

natgeo.nikkeibp.co.jp

 ヒト属が、地球上に存在する種の中で、文明の頂点に達することが出来たのは、道具を作ることと、言葉を発達させたからと言われる。

日本の生物学者で、大阪大学名誉教授の鈴木良次氏は、人と他の霊長類と手を比較すると、5本の指の中で、親指に一番大きな違いがみられると言う。

人は手の親指が、他の霊長類より太くて、長くて、人差し指の長さに対する親指の長さの比率が、人は約65%であるのに対して、オランウータンは40%と言われる。

この事から、人の指は、親指と他の指との対向運動が容易で、掴む動作だけではなく、摘まむ動作が出来るため、より精密な加工技術が発達したと考えられる。

手のなかの脳

手のなかの脳

 

 1964年に、ホモ・ハビリスの化石を発見したルイス・リーキーらは、「手の骨はホモ・サピエンス、現生人類に似て、短く幅の広い指骨が指先についている」と説明したとされる。

 

ゴルフクラブを初めて握る子供の中には、何も説明しなければバット握りをする子供がいる。

恐らく、棒状の道具であれば、それが本能的な行動なのであろう。

木の棒のような物で始めた先人の握りは、バット握りであったかもしれない。

野球やソフトボールを例として考えた場合、バットでボールを打つ行為には、ボールに当たる衝撃力に耐えうる握り方が必要で、ボールを投げる行為には、正確性と変化をさせるのに適した握り方が必要となる。

この目的の違いが、指の使い方の違いに現れると考えられないだろうか。

手の動作には、握力把握と精密把握があり、それぞれに役割がある。

握力把握とは掴む、握る動作で、中指、薬指、小指が主となる。

精密把握としての、摘まむ動作は、人差し指と親指が主として行う。

ペンを使って書いたり、包丁や箸を使うのは精密把握である。

日常生活に於いて、注意深く意識すると、精密把握を多用しているのが解る。

 

ゴルフは、野球などの打つ動作と投げる動作を合わせ持った行為と言える。

投げる動作の様に、距離の調節、飛球の変化を求められるのと同時に、打つ動作であるから衝撃に耐える必要もある。

野球の選手で、打者より投手がゴルフの得意な選手が多いと言われるのには、打者に比べ、投手が精密把握を駆使しているからと考えられるかもしれない。

他の競技で見てみるとテニスの握りは、人差し指と親指を外して握力把握が主体だが、卓球は人差し指と親指も使う握りになっている。

道具やボールの大小や、セーフティゾーンの広狭にも関係するだろう。

当然のことながら、グリップのサイズ違いもあるだろう、太ければ握力把握となりやすい。

 

ゴルフでは、クラブとボールの変遷と共に、スイング動作も変化してクラブの握り方、指の使い方にも影響をしている。

ヒッコリー時代のスイング動作を見ると、切り返しでは、クラブの挙動がかなり大きい事が解る。

その様にしないと飛ばなかったと言われる。

映像を見ても、シャフトのしなりがない事が解る。


Bobby Jones 1930 Golf Swing Analysis 16mm CinePost Restoration

 ヒッコリーシャフトはスチールより柔らかいとの解説が散見されるが、シャフトの専門家が振動数や剛性を計測した所、手元が相当硬いことが証明されている。

この事から、窺い知れるのは、先端とのしなり差が大きく手元を緩めて握らないと飛距離が出なかったのではないかと考えられないだろうか。

グリップを緩くすることで、手元側もしなりを効かせるスイングとなったのではないだろうか。

ゴルフのグリップがどのような過程で、親指と人差し指を利用する握りとなったのかは、解らないが長い年月の中、最適な方法として定着した事は間違いない。

 

スイスの思想家であるド二・ド・ルージュモンは言った

「思考する者もいれば、行動する者もいると、真の人間の条件とは、手で考えることだ。」

グリップを考える上で、決まりきったような解説に納得するべきではない。

ゴルフのグリップが、特殊な握りとなったのは、 掴む動作と摘まむ動作を手に入れた人が、最大限にその機能を生かせる知恵だったのではないだろうか。

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